疲れやすい、寝つきが悪い、なんとなく調子が優れない…
現代社会に生きる私たちの多くが、こうした不調を抱えているのではないでしょうか。
日々の食事に少しの工夫を加えるだけで、心と体のバランスを整えることができる薬膳は、そんな悩みを抱える方々にとって心強い味方となるかもしれません。
古来より東洋医学の知恵として受け継がれてきた薬膳にとはどのようなものなのかを分かりやすくご説明したいと思います。
薬膳とは
薬膳とは、中国の伝統医学に基づいた食事法です。
食材を選び、調理することで、食べ物を通じて体調を整え、健康を増進させます。
薬膳の基本的な考え方は「食薬同源」という言葉に表されており、食材と薬草は同じ源であり、日々の食事から健康を守ることができるという意味です。
薬膳の基本概念
薬膳では、食材の持つ「五性」(寒・涼・平・温・熱)や「五味」(酸・苦・甘・辛・鹹)を組み合わせて、体質や季節、体調に合った食事を作ります。
- 五性: 「五性」は食材の温度特性を指し、体を冷やすものから温めるものまで分類されています。
- 五味: 「五味」はそれぞれの味が異なる体への作用を持っており、健康維持に役立ちます。
季節に応じた食材の選び方
四季折々の変化に合わせた食材選びと調理法は、薬膳の重要な要素となっています。
たとえば、寒い時期には体を温める「温」や「熱」の食材(生姜や羊肉など)を使い、逆に暑い時期には体を冷やす「涼」や「寒」の食材(キュウリや冬瓜など)を使うことで、体内のバランスを保ちます。
【春の薬膳】目覚める季節の養生
春は自然界が目覚め、新しい芽吹きの季節です。
冬の間に滞りがちだった気の流れを整えるため、新芽や若葉などの軽やかな食材を取り入れることが推奨されます。
よもぎやふきのとう、たけのこなどの春の山菜には、肝機能を助け、体内の気の流れを促進する効果が期待されているようです。
【夏の薬膳】暑さを乗り切る知恵
夏場は暑さによる体力の消耗を防ぎ、適度な水分と栄養のバランスを保つことが重要となります。
とうもろこしやオクラ、きゅうりなどの涼性の食材を積極的に取り入れながら、過度な冷たい飲食は控えめにすることで、体調を整えやすくなると考えられています。
【秋の薬膳】実りの季節の養生
秋は収穫の季節であると同時に、乾燥しやすい時期でもあります。
栗やさつまいも、かぼちゃなどの温性の食材を取り入れることで、体を潤し、秋から冬への備えを整えていくことができるでしょう。
【冬の薬膳】体を温める工夫
寒い冬を乗り切るためには、体を温め、エネルギーを蓄えることが大切です。
根菜類や羊肉、山椒などの温性の食材を活用し、温かい汁物や煮込み料理を中心とした食事を心がけることで、寒さに負けない体づくりをサポートできるかもしれません。
薬膳を学ぶ楽しみ
薬膳を学ぶことは、健康に対する効果だけでなく、楽しみや充実感を感じさせてくれるさまざまな側面があります。
以下に薬膳を学ぶことの楽しみをいくつかご紹介します。
【楽しみ1】食と身体の関係を知る
薬膳を学ぶ楽しみの一つは「食材と体の関係についての知識」が得られることです。
普段何気なく食べている野菜や肉、魚なども、実は私たちの体に様々な形で働きかけていることがわかります。
例えば、生姜には体を温める作用があり、冬の冷えによる不調を和らげてくれます。
自分の体調や気分に合わせた料理を作ることができるため、食べることがより楽しくなったという方もいらっしゃいます。
例えば、疲労感を感じる日には補気(エネルギーを補う)食材を使ったスープを作るなど、自分の体に寄り添う食事を提供することができます。
これによって、体が求めるものを理解し、そのニーズに応じた料理を作る楽しさが感じられます。
【楽しみ2】料理の幅が広がる
また、薬膳の知識は日々の料理の幅を大きく広げてくれるのも楽しみの一つです。
薬膳の学びは料理を単なる栄養補給以上のものにします。
食材の効能や相性を考慮しながら、自分や家族の体調に合わせた料理を作るという創造的な過程は非常に楽しいものです。
今まで使ったことのなかった食材との出会いがあったり、伝統的な調理法を知ることで、新しい味わいの発見があったりと、食事がより豊かになっていきます。
【楽しみ3】季節の変化を楽しめる
薬膳を学ぶことでの楽しみの一つに、「季節の変化を楽しめる」ようになることがあります。
春の新芽、夏の苦味のある野菜、秋の根菜類、冬の温かい食材など、季節ごとの食材を取り入れてレシピを考えることで、四季折々の楽しさを感じることができます。
例えば、春にはデトックス効果のある山菜を取り入れたり、夏には体を冷やす瓜類を活用したりと、季節の変化に合わせた食事作りが楽しみになります。
【楽しみ4】家族や友人の健康
学んだ薬膳の知識を使って家族や友人のために料理を作ると、その食事が単なる「食べる」以上の価値を持つものになります。
食事を通じて健康を気遣い、体調や好みに合わせた料理を提供することで、大切な人たちとの交流が深まります。
また、相手の体調に合わせて特別な工夫を凝らした料理を提供することで、その人に対する思いやりや愛情を具体的に伝えることができるのです。
食材を選び、料理を工夫する過程そのものがコミュニケーションの一環となり、一緒に食事を楽しむことで絆がさらに深まります。
愛情を伝える手段としての料理を楽しむことができるだけでなく、相手の健康を支えることによって、自分自身も充実感と満足感を得られるでしょう。
薬膳に関する資格
薬膳に関する資格は多岐にわたり、取得することで中医学や薬膳の知識を深め、健康や美容に役立てることができます。
以下に、薬膳に関する主な資格とその特徴を紹介します。
通信教育で取得可能な資格
薬膳コーディネーター
ユーキャンが提供する講座で取得可能で、日常生活に薬膳を取り入れる提案ができる資格として注目されています。
中医学の基礎から季節や体調に合わせた薬膳の知識を学べます。
副教材として行平鍋や100種類のレシピ集が付属し、実践的な内容が特徴です。
比較的短期間での取得が可能で、入門レベルの資格として適しているでしょう。
和漢薬膳師(薬膳マイスター)
がくぶんが提供する講座で、日本人の体質や味覚に合わせた薬膳を学べます。
テキストやDVDの内容をオンラインで学習できる「がくぶんeマナ」に対応しており、柔軟な学習が可能です。
薬膳プロフェッショナル
ラーキャリが提供する講座で、最短3週間で資格取得が可能です。
LINEで24時間365日質問できるサポート体制が整っており、学習をスムーズに進められます。
民間スクールで取得可能な資格
薬膳アドバイザー・中医薬膳指導員・日本中医薬膳師
これらの資格は、日本中医食養学会で取得可能です。
中医学の理論を基に、実践的な薬膳の知識と技術を学べます。
まとめ
薬膳は、東洋医学の知恵を相談した食事療法として、現代を生きる私たちの健康維持をサポートしてくれる可能性を秘めています。
薬膳を学ぶことで、単なる食事作りを超え、体質に合わせた健康維持、季節との調和、深い食材の理解を得ることができます。
季節や体調に合わせて食材を選び、調理法を工夫して、自分自身だけでなく、家族や友人の健康をサポートする力にもなる「薬膳」を趣味として学んでみるのも楽しいと思います。