「編み物を始めてみたい」と思ったとき、最初につまずくのは編み方そのものより、その手前にあることかもしれません。どの針を選ぶのか、毛糸は何を買えばよいのか、最初に何を編むのか。売り場に立つと、迷ったまま時間だけが過ぎてしまうこともあります。

この記事では、50代・60代から編み物を始める方に向けて、道具の選び方・最初の作品の決め方・続けるための工夫を整理します。細編みや作り目といった編み方そのものの手順、特定の商品やメーカーの比較は扱いません。編み物という趣味そのものの楽しさについては、編み物の魅力|50代から始める方に多い3つの楽しみ方で紹介しています。

編み物を始めるときに決める4つのこと

編み物とは、毛糸などの糸を編み針で編んで、布や立体物を作る手芸です。初心者の方が始めるにあたって決めることは、大きく4つに分けられます。この4つを順番に決めていけば、売り場で迷う時間を減らせます。まずは全体像から確認していきましょう。

  1. かぎ針編みか、棒針編みか(使う針が違い、向いている作品も変わります)
  2. 最初に何を編むか(コースターなどの小物か、マフラーなどの平らなものか)
  3. どの道具をそろえるか(毛糸・編み針のほかに、とじ針とはさみがあれば編み始められます)
  4. 編み方をどこで知るか(基礎本・動画・教室・キットという選択肢があります)

このうち、1つめと2つめは実はつながっています。「何を編みたいか」が決まれば、使う針も自然と絞られるためです。道具をそろえるのは、そのあとで構いません。

始める前に知っておきたい2つの選び方

編み物を始めるときに決めることのうち、針の種類と最初の作品は、先に考えておくと進めやすくなります。どちらにも正解はなく、編みたいものによって向き不向きが変わります。ここでは、それぞれの特徴を並べて確認していきます。

かぎ針編みと棒針編みの違い

かぎ針編みは、先が鉤(かぎ)状になった針を1本だけ使って編む方法です。毛糸を針先にひっかけながら編むため、編み目が外れにくく、コースターや小物入れのように小さいものや、円形・立体的なものを編むのに向いています。

棒針編みは、2本の棒状の針を使って編み進めます。伸縮性のあるやわらかい編み地になりやすく、マフラーやベストのように平らで面積の大きいものに向いています。作品によっては4本針や輪針(りんばり)を使うこともあります。

どちらから始めても構いません。1本の針で進めるほうが手の動きが少なくて済むと感じる方もいれば、同じ動作を繰り返す棒針編みのほうが落ち着くと感じる方もいらっしゃいます。

「作りたいもの」から決める方法

針から決めるのが難しい場合は、作りたいものから逆に決めていく方法もあります。短時間で形になるものを編みたいのか、時間をかけて少しずつ進めたいのかで、選びやすくなります。

短い時間で仕上げたい場合は、コースター、アクリルたわし、シュシュ、ヘアバンドといった小物が候補になります。いずれもかぎ針編みで編むという選択肢があります。

時間をかけて編みたい場合は、マフラーやスヌード、ミニ巾着のような作品もあります。マフラーのように平らで面積の大きいものは、棒針編みで編む方法もあります。編みたいものが決まらないうちは、小さいものから一つ選んでみるという進め方もできます。

編み始めるまでの手順

ここからは、実際に編み始めるまでの流れを4つの手順に分けて説明します。買い物は一度で済ませる必要はなく、毛糸と針だけ先に買って、足りないものをあとから足していく進め方もできます。手順ごとに、迷いやすい点にも触れていきます。

手順1|毛糸と編み針を選ぶ

最初の一玉は、編み目が見やすいものを選ぶと進めやすくなります。目安になるのは太さと色です。「並太(なみぶと)」と表示された太さは編み目が確認しやすく、色は明るめのほうが目の数を数えやすくなります。

糸のラベルには、その糸に合う編み針の号数が書かれています。この適合号数はメーカーが推奨する目安とされており、編む力加減や仕上がりの風合いによって調整することもできます(日本ヴォーグ社「手づくりタウン」用具・材料 基本のき・2026年9月21日確認)。最初の一玉は、この目安どおりに選んでみてください。なお、毛糸用の棒針やかぎ針は、号数の数字が大きくなるほど針が太くなります。

素材はウール・アクリル・コットンなど複数あります。肌に触れると違和感を覚える素材もありますので、敏感な方は少量から試してみてください。

手順2|そのほかに用意する道具

毛糸と編み針のほかに用意しておきたいのが、とじ針とはさみです。とじ針は先が丸く針穴が大きい毛糸用の針で、編み終わりの糸の始末に使います。はさみは毛糸が切れるものであれば構いません。

慣れてきたら、編んだ段に目印を付ける段数マーカー(編み目に引っかけて使う小さな輪)や、作品の寸法を測るメジャーがあると便利です。道具は100円ショップでそろえることもできますし、手芸店で手になじむものを選ぶこともできます。まず試してみたい段階と、長く使うつもりの段階で、選び方を変える方法もあります。

最初から高価な道具をそろえる必要はありません。毛糸・編み針・とじ針・はさみの4点があれば、編み始めることはできます。

なお、編み針やとじ針、はさみは先端に注意が必要です。使わないときはケースにしまうなど、取り扱いにはご注意ください。

手順3|編み方を知る方法を選ぶ

編み方を知る方法には、大きく4つの選択肢があります。どれか一つに絞る必要はなく、組み合わせて使うこともできます。

一つめは基礎本です。初心者向けの基礎本には、基本の編み方が写真とイラストで順を追って載っており、手元に置いて見返せます。二つめは動画で、手の動きや糸のかけ方を実際の速さで確認できます。三つめは教室やサークルで、その場で質問できるほか、同じ趣味の方と知り合う機会にもなります。四つめはキットで、作品に必要な毛糸と編み図などがセットになっているため、材料選びの迷いが少なくて済みます。ただし、編み針などの道具が含まれていない商品もあります。購入前に、セットの内容と別に用意する道具を確認しておくと安心です。

手の動かし方は文字だけでは伝わりにくい部分があるため、本と動画を併用するやり方もあります。

手順4|最初の作品を編み上げるまで

いきなり本番を編み始めず、10目ほどを数段編んで、針の動かし方や糸を引く力加減を確かめてみる方法があります。手を慣らすための練習なので、編み目がそろわなくても気にする必要はありません。

なお、編み図の寸法どおりに仕上げたい作品では、本番と同じ糸と針で試し編みをして、10cm四方に何目・何段あるかを測る工程があります。これを「ゲージをとる」といいます。測り方は、基礎本などで確認してみてください。

そのあと、小さな作品を一つ編み上げます。最後の段まで編んだら、編み図に従って編み終わりの処理をします。棒針編みでは、伏せ止めなどで目を止めてから、残った糸端をとじ針で編み地に通して始末します。作品によっては、編み地どうしをつなぐなどの仕上げも行います。

途中で失敗しても、編み物はほどいてやり直せます。ほどいた毛糸は、もう一度編み直すことができます。

手元と体に無理のない環境をつくる

編み物が続くかどうかには、技術だけでなく、編むときの環境が影響することもあります。手元が見えにくい、長く座っていると肩や腰がつらい、といった条件は、道具をそろえる段階では意識されないまま進むこともあります。ここは、始める前に整えておくと後が楽になる部分です。

手元の明るさと見えやすさ

編み目は細かく、手元が暗いと数えにくくなります。手元を照らす照明を近くに置く、日中の明るい時間に編むといった工夫で、見え方は変わります。

細かい編み目が気になる場合は、卓上に置くタイプの拡大鏡を使う方法もあります。編み図が小さくて読みにくいときは、拡大コピーをとって手元に置いておくと確認しやすくなります。明るい色の毛糸を選んでおくことも、見えやすさにつながります。

見えにくさを我慢したまま続けると、目が疲れやすくなることもあります。目の不調が続く場合は、自己判断せず眼科にご相談ください。

姿勢・休憩・手の使い方

編んでいるあいだは前かがみの姿勢になりやすく、同じ体勢が長時間になりがちな作業です。一度にまとめて編むより、短い時間を重ねていくやり方もあります。

区切りを決めて一度立ち上がる、肩を回すといった小さな休憩をはさむだけでも、体勢は変わります。50代から始める方も、60代で久しぶりに再開される方も、ご自身の体調に合わせて区切りを決めてみてください。

手や指に違和感や痛みを感じたときは、無理をせず中断してください。気になる状態が続く場合は、医師にご相談ください。

続けるための工夫

編み始めたあと、途中で手が止まってしまうことがあります。編みかけのまま、袋に入れて置いたままになる場合もあります。ここでは、続けるというより「戻りやすくしておく」という考え方で工夫を紹介します。

小さく完成させる

大きな作品を一つ編むより、小さい作品を何度か完成させるという進め方もあります。コースターやアクリルたわしのように短い時間で仕上がるものであれば、編み始めてから完成までの流れが途切れにくくなります。

完成したものが手元に増えていくと、次に編むものも決めやすくなります。マフラーのように時間のかかる作品は、小さいものをいくつか編んだあとに取りかかるという順番もあります。

一つ編み上げたら、同じものをもう一度編んでみるのも一つの方法です。二度目は手順を思い出す時間が減るぶん、編み目の様子にも目が向きやすくなります。

中断しても戻れるようにしておく

編みかけで止まってしまったとき、「どこまで編んだか分からない」という状態になることがあります。編むのをやめるときに、編んだ段数をメモに書いて毛糸と一緒に入れておくと、再開するときに探さずに済みます。

編み地の写真を撮っておく、毛糸・針・編み図をまとめて一つの袋に入れておく、といった方法もあります。数週間あいても、同じ袋を開ければ続きから始められます。

途中でやめたことを、失敗ととらえる必要はありません。時間の取れる時期に戻ってくればよい、という付き合い方もできます。趣味との距離の取り方については、50代女性の趣味の探し方でも触れています。

よくあるご質問

ここでは、編み物を始めるときの疑問を4つ取り上げます。

Q: 不器用でも始められますか?

手先の器用さよりも、最初にどの編み方と作品を選ぶかのほうが、進めやすさに関わってきます。編み目がそろわなくても、ほどいてやり直せるのが編み物です。まずは10目ほどの試し編みから触れてみてください。どのような方が編み物を楽しんでいるかは、編み物が好きな人の性格とは?でも紹介しています。

Q: かぎ針と棒針、どちらから始めるとよいですか?

どちらが正解ということはありません。小物を短時間で形にしたい場合はかぎ針編み、マフラーのように平らで大きなものを編みたい場合は棒針編み、という選び方もあります。作りたいものから決めていくと迷いにくくなります。

Q: 道具は100円ショップのもので足りますか?

まず試してみる段階であれば、100円ショップでそろう毛糸と針で編み始めることもできます。続けていくなかで、持ちやすさや編みやすさが気になってきたときに、手芸店で買い替えるという進め方もあります。

Q: 60代から、学生時代以来で再開する場合は何から始めるとよいですか?

家庭科の授業などで一度触れた経験があっても、針の持ち方を覚えているか不安に感じる方もいらっしゃいます。基礎本や動画で持ち方と基本の編み方を確認し直し、小さい作品を一つ編んでみるところから始める方法があります。当時とは道具も毛糸も変わっていますので、新しく選び直すつもりで見てみてください。

まとめ

50代・60代から編み物を始めるときに決めることは、針の種類・最初の作品・そろえる道具・編み方を知る方法の4つです。この4つは「何を編みたいか」から順に決めていくと、迷いが少なくなります。

道具は毛糸と編み針、とじ針とはさみがあれば編み始められます。あわせて、手元の明るさと休憩の取り方を整えておくと、続けやすさが変わってきます。途中で止まっても、段数のメモと編みかけを一つの袋にまとめておけば、また戻ってこられます。

手芸には編み物のほかにも選択肢がありますので、手芸の種類と楽しみ方とあわせて比べてみるのもよいかもしれません。

まずは毛糸を一玉、手に取ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。


※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、医学的な効果効能を保証するものではありません。体調に不安のある方や持病をお持ちの方は、医師にご相談の上、無理のない範囲でお楽しみください。手や目に痛み・違和感を感じた場合は、無理せず中断してください。

※毛糸の素材によっては肌に合わない場合があります。気になる方は少量から試すなど、ご自身の体質に合わせてお楽しみください。