はじめに
編み物やお菓子づくり、写真、書道など、長く続けてきた趣味がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子どもの独立や定年、再雇用などで時間の使い方が変わり、「この趣味を仕事にできないか」と考え始めることもあります。
一方で、「趣味を仕事にするな」「仕事にしないほうがいい」という声を目にして、迷っている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、趣味を仕事にするデメリットを先に取り上げ、そのあとでメリットを整理します。
あわせて、仕事にする形の例、仕事にしないという選択肢、決める前に小さく試す手順、始める前に確かめたいことも紹介します。
定年後に働き方が変わった方や、年金を受け取りながら考えている60代の方の事情にも触れます。
なお、収入の目安、お店などに雇われて働く場合の求人の探し方、特定の講座や販売サービスの紹介、開業や確定申告の手続きの方法は扱いません。
趣味を仕事にするとは?「趣味」と「仕事」で変わること
趣味を仕事にするとは、趣味として続けてきた技術や知識を生かし、報酬を受け取って人に提供することです。
同じ作品や同じ技術でも、報酬を受け取るかどうかで、作り手が受け持つことが変わります。
このセクションでは、変わることを3つに分けて見ていきます。
どれもそれ自体が良いことでも悪いことでもなく、受け止め方によって、メリットにもデメリットにもなります。
お金を払う相手と「約束」ができる
報酬を受け取ると、相手との間に約束が生まれます。
説明したとおりの仕上がりで、決めた期日までに届けることが求められます。
問い合わせへの返事や、不具合があったときの対応も、受け持つことになります。
贈り物であれば喜んでもらえれば十分という場面でも、仕事では約束を守ることが前提になります。
お金と決まりが関わるようになる
仕事にすると、お金の出入りを記録し、申告が必要かどうかを判断することになります。
勤務先がある方は、就業規則などのルールに当てはまるかを確かめる場面も出てきます。
作品の種類によっては、販売に許可や表示の決まりが関わる場合もあります。
具体的な確かめ方は、このあとの「始める前に確かめたいこと」で紹介します。
休む・やめるときに、相手への配慮が要る
趣味であれば、気が乗らない時期は休み、やめたくなったらやめることができます。
仕事にした場合は、受けた注文や予約、教室の予定などがあるため、休む時期や終わり方を相手に伝える必要があります。
始める前に「どのように休むか」「どのように終えるか」を考えておくと、続けるかどうかを決めやすくなります。
「趣味を仕事にしたい」と感じるのはなぜか
趣味を仕事にしてみたいと思うきっかけは、人によってさまざまです。
このセクションでは、きっかけとして考えられる場面と、働きたい理由について公表されている調査を紹介します。
ご自身の気持ちがどこから来ているのかを知っておくと、どの形が合うかを考える手がかりになります。
きっかけとして考えられる4つの場面
きっかけとして考えられる場面を、4つ挙げてみます。
一つは、作りためた作品や身につけた技術が、手元に増えてきたことです。
二つめは、作品を贈ったり教えたりして喜ばれ、ほかの方にも届けたいと感じたことです。
三つめは、子どもの独立や定年、再雇用などで、時間の使い方が変わったことです。
四つめは、収入の柱をもう一つ持っておきたいと考えたことです。
親の介護をしながら家でできることを探している方もいらっしゃいますし、会社員として働きながら週末の時間で何か始めたい方もいらっしゃいます。
どのきっかけから考え始めたかによって、合う形や、確かめたいことの順番が変わります。
働きたい理由は、収入だけとは限らない
内閣府は、60歳以上の男女を対象にした国際比較調査を、令和7年9月中旬から11月上旬にかけて行っています(内閣府「令和7年度高齢社会対策総合調査(高齢者の生活と意識に関する国際比較調査)」)。
「令和8年版高齢社会白書」では、この調査のうち65歳以上の方の回答をまとめています(内閣府「令和8年版高齢社会白書」第1章第3節「生活満足度・生きがいについて」「就労について」・2026年6月12日閣議決定・2026年10月24日確認)。
それによると、今後「収入を伴う仕事をしたい(続けたい)」と回答した割合は、日本では39.0%でした。
そう回答した方の主な理由として、日本では「収入が欲しいから」と回答した割合が最も高く、次いで「働くのは体によいから、老化を防ぐから」となっています。
理由の選択肢には、「仕事そのものが面白いから、自分の活力になるから」「仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから」「自分の知識・能力を生かせるから」も用意されています。
これは65歳以上の方の回答をまとめた結果で、趣味を仕事にすることについて尋ねたものではありません。
また、回答者が挙げた理由であり、働くことによる健康への効果を示すものでもありません。
この調査の選択肢のように、働きたい理由には、収入のほかに、仕事の面白さや人とのつながり、知識を生かすことといった観点もあります。
ご自身にとってどれがいちばん大きいのかを考えておくと、仕事にするかどうかを決めるときの目安になります。
趣味を仕事にする7つのデメリット|「仕事にしないほうがいい」と言われる理由
「趣味を仕事にしないほうがいい」という声の背景として考えられるのは、仕事にすると、趣味のときにはなかった負担が出てくることです。
このセクションでは、考えられるデメリットを7つ挙げます。
番号は順位ではなく、どれが当てはまるかは、仕事にする形や始め方によって変わります。
①楽しみが「義務」に変わる場合がある
趣味には、作りたいときに作り、休みたいときに休めるという楽しさがあります。
仕事にすると、期日や数を守るために手を動かす日も出てきます。
楽しみだった時間が「やらなければならない時間」に変わり、以前ほど楽しめなくなったと感じる方もいらっしゃいます。
楽しめなくなったと感じたときの向き合い方は、別の記事でも整理しています。
②作りたいものより「求められるもの」を優先する場面が出る
売ったり教えたりすると、買う方や受講する方の希望に合わせる場面が出てきます。
同じ作品をくり返し作ったり、得意ではない色や形を求められたりすることもあります。
作りたいものと求められるものが違ったときにどちらを優先するかを、先に考えておくと迷いにくくなります。
③作る・教える以外の作業に時間を取られる
仕事にすると、作る時間や教える時間のほかに、さまざまな作業が加わります。
例えば、写真を撮る、説明文を書く、問い合わせに返事をする、梱包して発送する、売上や経費を記録する、といった作業です。
教室を開く場合は、会場の準備や申込みの受付、受講する方への連絡なども必要になります。
会社などに勤めながら副業をすると、就業時間が長くなる可能性があります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、そのため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要であることを、留意点に挙げています(厚生労働省「副業・兼業と労働条件」・2026年10月24日確認)。
趣味に使っていた時間がこうした作業に回り、作る時間そのものが減ったと感じる場合もあります。
時間が足りないと感じるときの考え方は、こちらの記事でも紹介しています。
④収入が安定するとは限らず、出費が先になることもある
趣味を仕事にしても、収入が安定するとは限りません。
収入は、作品や教える内容、販売や募集の方法、続けた期間などによって大きく異なるため、この記事では金額の目安を示していません。
一方で、材料費や道具の買い足し、会場を借りる費用、販売の場の手数料、送料など、収入より先に出費が出る場合もあります。
始める前に、どのくらいの出費までなら試してみられるかを決めておくと、続けるかどうかを判断しやすくなります。
⑤勤務先のルールや申告など、確かめることが増える
仕事にすると、趣味のときには関わらなかった決まりを確かめることになります。
勤務先がある方は副業のルール、収入があれば申告が必要かどうか、作品によっては許可や表示の決まりなどです。
一つひとつは確かめれば分かることですが、始める前に、確かめるための時間を取っておく必要があります。
⑥家族の予定や体調と重なったときに休みにくい
注文や予約、教室の予定を受けていると、家族の予定や親の介護、ご自身の体調と重なったときに休みにくくなります。
趣味であれば延ばせた予定も、相手との約束があると、すぐには動かせません。
細かい作業を長く続けて、目や肩、手首に負担を感じる場合もあります。
受ける数に上限を決めておく、受付を休む方法を決めておくなど、休めるしくみを先に用意しておく方法があります。
痛みや違和感が続くときは、無理をせず医療機関に相談します。
⑦「仕事にするための講座」などの勧誘に出合う場合がある
趣味を仕事にしたいと考えて情報を集めていると、仕事にするための講座やスクールの広告を目にする場合もあります。
国民生活センターは、副業・兼業への関心の高まりなどを背景に、スキルの習得や収入の向上を目的とするビジネス講座の需要も拡大しているとしています。
そのうえで、AI講座やSNS運用講座などのビジネス講座に関する相談は、増加傾向で推移していると説明しています(国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」2026年9月16日公表・2026年10月24日確認)。
同じ資料では、ビジネス講座に関する年度別の相談件数は、2020年度の1,169件に対し、2025年度は3,551件とされています(消費生活センター等からの経由相談を含まない、2026年7月31日までのPIO-NETの登録分)。
この資料は、趣味を仕事にすること自体を対象にしたものではありません。
ただ、「仕事にするには学びが必要」と考えたときに、講座の契約を考える場面が出てくる場合もあります。
契約の前に確かめたいことは、このあとの「始める前に確かめたいこと」で紹介します。
趣味を仕事にするメリット
デメリットがある一方で、趣味を仕事にすることで得られるものもあります。
このセクションでは、考えられるメリットを5つ挙げたあと、同じ変化がメリットにもデメリットにもなることを表で整理します。
どれも誰にでも当てはまるものではなく、形や続け方によって変わります。
好きなことに関わる時間が増え、続けるきっかけになる場合がある
仕事にすると、作る日や教える日が予定に入り、好きなことに関わる時間が増える場合があります。
期日があることで手を動かすきっかけができ、しばらく離れていた趣味を再開する張り合いになったと感じる方もいらっしゃいます。
技術や知識が、人の役に立つ形になる
これまで自分のために使ってきた技術や知識が、ほかの方の暮らしや楽しみに役立つ形になります。
作品を使っていただいたり、教えたことができるようになったと聞いたりすると、続けてきたことの意味を感じる場合もあります。
腕を磨くきっかけになる場合がある
人に届けるとなると、仕上がりをそろえたり、分かりやすく説明したりする工夫が必要になります。
買う方や受講する方の感想が、次の工夫の手がかりになる場合もあります。
写真を撮ったり説明文を書いたりする中で、自分の作品の特徴にあらためて気づく場合もあります。
人とのつながりが広がる場合がある
教室や手作り市、地域の催しなどに関わると、同じ趣味を持つ方や、作品を手に取ってくださる方と出会う機会ができます。
子どもの独立や退職で人と話す機会が減ったと感じている方にとっては、新しいつながりのきっかけになる場合もあります。
収入につながる場合もある
続け方によっては、収入につながる場合もあります。
ただし、収入は形や続け方によって大きく異なるため、この記事では金額の目安を示していません。
収入があった場合は、申告が必要かどうかを判断することになります。
同じ変化が、メリットにもデメリットにもなる
ここまで見てきたように、仕事にすることで起きる変化は、受け止め方によって張り合いにも負担にもなります。
下の表は、その例をまとめたものです。
| 変化 | 張り合いになる場合の例 | 負担になる場合の例 |
|---|---|---|
| 期日や約束ができる | 手を動かすきっかけになる | 家族の予定や体調と重なったときに休みにくい |
| 買う方・受講する方の反応が届く | 感想が次の工夫の手がかりになる | 求められるものに合わせるうちに、作りたいものから離れる |
| 作る以外の作業が加わる | 写真や説明文を考える中で、作品の特徴に気づく | 作る時間そのものが減ったと感じる |
どちらに傾くかは、受ける量や休み方をどう決めておくかによっても変わります。
趣味を仕事にする形の例|「小さく働く」5つの選択肢
趣味を仕事にする形は、作品を売ることだけではありません。
このセクションでは、小さく始めることを考えやすい形の例を5つ紹介したあと、表で整理します。
形によって、やりとりの相手や確かめたいことが違います。
収入は形や続け方によって大きく異なるため、ここでも金額の目安は示していません。
①作って売る
編み物や布小物、アクセサリーなどの作品を、ネット上の販売の場や手作り市、委託販売などで売る形です。
作品の種類によっては販売に許可や表示の決まりが関わるほか、販売の場ごとに利用規約や手数料が決められています。
ハンドメイドの販売を始める前に確かめたいことは、別の記事で詳しく整理しています。
ハンドメイド副業を始める前に|50代・60代で確かめたい5つのこと
②教える(教室・体験会・講座)
自宅や借りた会場、オンラインなどで、趣味の技術を教える形です。
1回きりの体験会から、決まった曜日に開く教室まで、続け方を選べます。
会場を借りる場合は、受講料を集める使い方ができるかどうかを、会場の利用案内で確認しておくと安心です。
申込みやキャンセルの決め方、教材に使う型紙やデザインの権利なども、始める前に決めておきたいことです。
③頼まれて作る・直す
知人などから頼まれて、作品を作ったり、衣類のお直しをしたりする形です。
注文に合わせて作るため、仕上がりのイメージと期日、材料費をどちらが負担するかを、引き受ける前にすり合わせておきます。
預かった品を扱う場合は、受け取りと返却の方法も決めておくと安心です。
④在宅で、文章などの仕事を受ける
趣味で身につけた知識を生かして、文章を書く、情報をまとめるといった仕事を、事業者から在宅で受ける形もあります。
契約の内容や、報酬が支払われる時期は、仕事を受ける前に確認しておきます。
「仕事を紹介する」と言われて、先に教材や登録の費用を求められた場合は、契約の前に立ち止まります。
この記事では、広告収入やアフィリエイトで収入を得る方法は扱いません。
⑤学んで資格につなげる
趣味の分野で講座を受けて資格を取り、教える活動などにつなげる形です。
ただし、資格を取っても、仕事につながるとは限りません。
申し込む前には、講座の内容や総支払額、解約の条件、資格を認定する団体を確認しておくと安心です。
資格を取る前に考えたいことは、こちらの記事で整理しています。
5つの形と、始める前に確かめたいこと
5つの形を、やりとりの相手と、始める前に確かめたいことの例で整理しました。
| 形 | 主なやりとりの相手 | 始める前に確かめたいことの例 |
|---|---|---|
| ①作って売る | 作品を買う方、販売の場 | 販売の場の利用規約と手数料、作品ごとの許可や表示の決まり |
| ②教える | 受講する方、会場 | 受講料を集める使い方ができるか、申込みとキャンセルの決め方、教材に使う型紙やデザインの権利 |
| ③頼まれて作る・直す | 依頼する方 | 仕上がりのイメージと期日、材料費の負担、預かった品の受け取りと返却 |
| ④在宅で、文章などの仕事を受ける | 仕事を依頼する事業者 | 契約の内容と報酬が支払われる時期、先に費用を求められていないか |
| ⑤学んで資格につなげる | 講座の運営者、資格を認定する団体 | 講座の内容と総支払額、解約の条件、資格を認定する団体 |
勤務先がある方は、どの形を選ぶ場合も、勤務先のルールを確認しておきます。
「仕事にしない」という選択肢もある
趣味を仕事にするかどうかは、「仕事にする」か「何もしない」かの二択ではありません。
このセクションでは、仕事にしないまま、趣味を人と分かち合ったり深めたりする選択肢を紹介します。
仕事にしてみて合わなければ趣味に戻す、ということも選べます。
趣味のまま続ける・贈る・作品展に出す
趣味のまま続け、作品は家族や友人に贈る、地域の作品展に出す、といった楽しみ方もあります。
約束や期日に縛られないため、作りたいものを作りたいペースで続けられます。
人に見てもらう機会がほしい方は、作品展や発表会という形も選べます。
無償で教える・地域の催しを手伝う
地域のサークルや催しで、趣味の技術を無償で教えたり、手伝ったりする関わり方もあります。
報酬を受け取らない形でも、人の役に立つことや、人とのつながりを感じられる場合があります。
学ぶこと自体を目的にする
仕事につなげることを目的にせず、学ぶこと自体を楽しむという選び方もあります。
講座や本で知識を深めたり、新しい技法に挑戦したりする時間を、趣味として楽しむ方もいらっしゃいます。
これから楽しめる趣味を探している方は、こちらの記事も参考にしてください。
50代女性の趣味の見つけ方|一人で・お金をかけずに始める選び方
仕事にすることを選んでも、選ばなくても、どちらもご自身の時間の使い方です。
決める前に小さく試せる5つの手順
仕事にするかどうかを、最初から決めきる必要はありません。
このセクションでは、大きく始める前に、小さく試して振り返る手順の一例を5つ紹介します。
試した結果、仕事にしないと決めることも、一つの答えです。
- 好きなポイントを書き出す:作る時間そのものが好きなのか、喜ばれることが好きなのか、教えることが好きなのかを書き出す
- 1週間に使える時間を書き出す:作る時間に加えて、連絡や記録などの作業に使える時間も見積もる
- 身近な頼まれごとを一度引き受けてみる:仕上がりと期日を約束して作ってみると、負担に感じる点と楽しい点が見えてくる場合がある
- 単発の場に一度出てみる:手作り市や体験会など、1回で終わる場に参加してみる
- 期間を区切って振り返る:続ける、形を変える、趣味に戻す、のどれにするかを考える
試している間は、使った時間と出費を記録しておきます。
記録は、続けるかどうかを考える材料にも、収入があったときに申告が必要かどうかを判断する材料にもなります。
始める前に確かめたいこと
仕事にすると決めたら、始める前に確かめておきたいことがあります。
このセクションでは、どの形にも関わる確認を4つにしぼって紹介します。
ハンドメイドの販売を考えている方は、作品ごとの決まりや年金を受け取っている方の申告の扱いまで詳しく整理した記事も、あわせてご覧ください。
ハンドメイド副業を始める前に|50代・60代で確かめたい5つのこと
勤務先のルール
会社などに勤めている方は、副業についての勤務先のルールを先に確かめます。
厚生労働省は、副業・兼業を希望する場合は、まず、勤めている会社の副業・兼業に関するルールを確認するよう案内しています(厚生労働省「副業・兼業と労働条件」・2026年10月24日確認)。
厚生労働省は、就業規則の参考としてモデル就業規則を示しています。
その第70条では、労働者は勤務時間外に他の会社などの業務に従事できるとしたうえで、届出にもとづき、労務提供上の支障がある場合などには、会社が禁止または制限できるとしています(厚生労働省「副業・兼業と労働条件」・2026年10月24日確認)。
ただし、実際のルールは勤務先ごとに異なるため、人事や総務の担当部署に確かめます。
公務員の方は、国家公務員法や地方公務員法で、兼業に許可や承認が必要とされている場合があるため、所属先の人事担当にたずねます。
定年後に再雇用やパートで働いている60代の方も、雇用の形が変わると適用される就業規則が変わる場合があるため、今の勤め先のルールで確かめておきます。
申告の基準
収入があった場合は、申告が必要かどうかを判断することになります。
国税庁の案内では、給与所得者でも確定申告をしなければならない人を挙げています。
その一つが、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人です(国税庁 タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」・令和8年4月1日現在法令等・2026年10月24日確認)。
ただし、確定申告をすれば税金が還付される人は除かれています。
ここでいう所得は、売上の金額そのものではありません。
例えば、雑所得のうち「業務に係るもの」(副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの)は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算するとされています(国税庁 タックスアンサー「No.1500 雑所得」・令和8年4月1日現在法令等・2026年10月24日確認)。
住民税の申告の扱いは、所得税とは別に、お住まいの市区町村の案内で確かめます。
年金を受け取っている方や、給与を2か所以上から受けている方などは、条件が異なります。
ご自身の場合の判断は、税務署や税理士に相談します。
講座や「仕事の紹介」を勧められたとき
仕事にするための講座や、「仕事を紹介する」という誘いを受けたときは、その場で契約を決めないことが大切です。
国民生活センターは、ビジネス講座の契約について、次のような点を消費者へのアドバイスとして挙げています(国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」2026年9月16日公表・2026年10月24日確認)。
- 広告や勧誘の内容だけで判断せず、講座の内容や難易度を契約前に細かく確かめる
- Web会議でビジネス講座の勧誘をされても、その場で契約を決めずに、いったん冷静に考える。特に、突然高額な講座を勧められたり、説明が足りなかったりする場合は、きっぱり断る
- 月々の支払額だけでなく総支払額を確かめ、特に長期間にわたる高額の契約をクレジット払いする場合は、支払えるかどうかを慎重に考える
- 解約の条件を契約前に細かく確かめる
- 不安なときやトラブルになったときは、すぐに最寄りの消費生活センター等に相談する
相談先が分からないときは、消費者ホットライン「188」で、お住まいの地域の消費生活センター等を案内してもらえます。
消費者庁は、「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘い、仕事に必要であるとして商品などを売って金銭負担を負わせる取引を「業務提供誘引販売取引」として説明しています(消費者庁 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」・2026年10月24日確認)。
この取引の決まりは、ハンドメイド副業の記事で紹介しています。
作品ごとの決まり
作って売る場合は、作品の種類によって、販売に許可や届出、表示の決まりが関わる場合があります。
例えば、焼き菓子などの食品、身体を洗う石けんなど肌に使うもの、照明器具など電気を使うもの、衣類などの一部の繊維製品です。
作り始める前に、関係する決まりと確かめる先を確認しておきます。
よくあるご質問
ここまでの内容に関わる疑問を、6つ取り上げます。
Q1:趣味を仕事にするのは「危険」ですか?
危険かどうかは、仕事にする形や始め方によって変わります。
気をつけたいのは、確かめることを確かめないまま大きく始めることや、「仕事にするため」として高額な講座などをその場で契約することです。
小さく試し、勤務先のルールや契約の内容を確かめてから始めることが、思わぬトラブルへの備えになります。
Q2:仕事にして、趣味が嫌いになったらどうすればいいですか?
休む、受ける量を減らす、形を変える、趣味に戻す、といった選び方があります。
一度仕事にしたからといって、ずっと続けなければならないわけではありません。
受けている注文や予約がある場合は、終わり方を相手に伝えてから区切ります。
楽しめなくなったと感じたときの向き合い方は、デメリット①で紹介した記事でも整理しています。
Q3:趣味の延長でも「副業」になりますか?
勤務先のルールの上で「副業」に当たるかどうかは、勤務先の就業規則の決め方によって変わります。
趣味の延長のつもりでも、作品の販売や教室の開催が届出の対象になる場合もあるため、人事や総務の担当部署に確かめます。
税金の面では、収入があった場合に、「始める前に確かめたいこと」で紹介した国税庁の基準で考えます。
Q4:どのくらいの収入になりますか?
収入は、作品や教える内容、販売や募集の方法、続けた期間などによって大きく異なるため、この記事では金額の目安を示していません。
その代わりに、申告が必要になる基準や勤務先のルールなど、始める前に確かめられることを紹介しています。
収入の見通しを示されて講座などを勧められた場合は、その場で契約せず、講座の内容と総支払額を確かめます。
Q5:60代からでも始められますか?
60代から、趣味を生かして小さく働き始める方もいらっしゃいます。
この記事では、年齢ではなく、始める前に確かめられることのほうに目を向けてきました。
年金を受け取っている方は申告の扱いを、定年後に再雇用やパートで働いている方は今の勤め先のルールを、あらためて確かめておくと安心です。
体力や家族の予定と相談しながら、受ける量を小さく決めて始める方法もあります。
Q6:趣味を仕事にするアプリはありますか?
作品を販売する場や、技術や知識を生かした仕事を受けられるサービスなど、さまざまなものがあります。
この記事では、特定のサービスは紹介していません。
使う場合は、出品や登録の条件、手数料、売上や報酬を受け取る時期などを、その時点の利用規約で確かめます。
まとめ
趣味を仕事にするデメリットとメリット、仕事にする形の例、仕事にしないという選択肢、小さく試す手順、始める前に確かめたいことを紹介しました。
主なポイントは次のとおりです。
- デメリットには、楽しみが義務に変わる場合があること、作る以外の作業が増えること、収入が安定するとは限らないこと、講座などの勧誘に出合う場合があることなどがある
- メリットには、好きなことに関わる時間が増える場合があること、技術や知識が人の役に立つ形になること、人とのつながりが広がる場合があることなどがある
- 仕事にする形には、作って売る、教える、頼まれて作る・直す、在宅で文章などの仕事を受ける、学んで資格につなげる、などがある
- 仕事にしない、小さく試してから決める、合わなければ趣味に戻す、という選び方もある
仕事にすることを選んでも、選ばなくても、どちらもご自身の時間の使い方です。
続けてきた趣味を思い浮かべながら、まずは5つの手順の1つめ「好きなポイントを書き出す」から始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2026年10月24日時点で、国民生活センター・内閣府・国税庁・厚生労働省・消費者庁の公式サイトを確認して作成しています。
制度や規約は変更される可能性があるため、最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
※収益や取引量は商品・販路・継続期間等により大きく異なります。
本記事の事例はあくまで一般的な傾向であり、収益を保証するものではありません。
副業に関する税務処理は、収入額や雇用契約等の条件により異なります。
詳細は税理士または国税庁公式サイトでご確認ください。
50代からの趣味と仕事
