はじめに

編み物や布小物、アクセサリーなどを長く作ってきて、「作ったものを売ってみたい」と考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、作品を売るとなると、勤務先のルールや税金の申告、作品によっては許可や表示の決まりなど、趣味で作るときには関わらなかったことが出てきます。

この記事では、初めて作品を販売する方に向けて、ハンドメイドを副業として始める前に確かめたい5つのこと(勤務先のルール、お金と制度、作品ごとの決まり、販売の場、暮らしとの両立)を、公的機関の案内をもとに整理します。

定年後に再雇用で働いている方や、年金を受け取りながら始めたい60代の方の事情にも触れます。

なお、売れやすい作品の一覧や収入の目安、確定申告や開業届の手続きの方法、特定の販売サービスの比較は扱いません。

ハンドメイドの副業とは?趣味で作ることとの違い

ハンドメイドの副業とは、本業とは別に、自分で作った作品を販売して収入を得る働き方のことです。

趣味で作っていたものに値段をつけて売ると、買ってくださる方との約束が生まれ、作品やお金の扱いに決まりが関わってきます。

このセクションでは、「贈る」と「売る」で何が変わるのかを確かめたうえで、始める前に確かめたい5つのことを先にまとめます。

「贈る」と「売る」で変わること

同じ作品でも、贈るときと売るときでは、作り手が受け持つことが変わります。

贈り物として渡すときは、相手に喜んでもらえれば、それで十分という場合もあります。

売る場合は、代金と引き換えに、説明どおりの作品を、約束した時期に届けることになります。

届いた作品に不具合があったときの対応や、問い合わせへの返事も、売る側が受け持ちます。

さらに、作品の種類によっては、販売に許可や届出が必要になったり、品質などの表示が決められていたりします。

お金の面でも、売上や材料費を記録しておき、申告が必要かどうかを判断することになります。

始める前に確かめたい5つのこと

この記事では、次の5つを順に見ていきます。

  1. 勤務先のルール:作品の販売が勤務先の定める「副業」に当たるか、届出や許可が必要か
  2. お金と制度:確定申告が必要になる条件、住民税の申告、年金を受け取っている場合の扱い
  3. 作品ごとの決まり:食品・石けん・電気を使う作品などの許可や届出、衣類などの表示、柄や型紙の権利
  4. 販売の場と表示:販売の場ごとの利用規約、ネットで売るときの特定商取引法の表示、勧誘への注意
  5. 暮らしとの両立と、作る楽しさ:制作以外にかかる時間、家族の予定や介護との兼ね合い、楽しさを残せるか

気になる項目から読んでいただいても構いません。

「作ったものを売ってみたい」と思ったら

編み物や手芸を副業にしてみたいと思うきっかけは、人によってさまざまです。

このセクションでは、きっかけをいくつか挙げたうえで、この記事が何に目を向けて書いているのかをお伝えします。

売ってみたいと思うきっかけ

きっかけとして考えられるものを、いくつか挙げてみます。

一つは、作りためた作品が手元に増えてきたことです。

二つめは、贈った作品を喜んでもらえて、ほかの方にも使ってもらいたいと感じたことです。

三つめは、子どもの独立や定年などで、時間の使い方が変わったことです。

会社員として働きながら週末の時間で何か始めたい方もいらっしゃいますし、親の介護をしながら、家でできることを探している方もいらっしゃいます。

この記事では「いくらになるか」より「続けられるか」に目を向けます

ハンドメイドの副業について調べると、「月にいくらになるか」という情報が目に入ることがあります。

ただ、収益は作品の種類や販売の場、続けた期間などによって大きく異なるため、この記事では金額の目安を示していません。

その代わりに、始めてから困らないための確認と、作る楽しさを残しながら続けられるかどうかに目を向けます。

売ることを選んでも、売らずに趣味として作り続けることを選んでも、どちらもご自身の時間の使い方です。

確かめたいこと①:勤務先のルール

作品の販売が勤務先の定める「副業」に当たるかどうか、届出や許可が要るかどうかは、勤務先によって違います。

材料や販売の場を準備する前に、まず勤務先のルールを確かめておきます。

会社員・パートの方は、就業規則の副業規定を見る

民間の会社で働いている方の場合、副業の扱いは、就業規則などで決められている場合があります。

厚生労働省が就業規則の参考として示している「モデル就業規則」の第70条(副業・兼業)では、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、会社は届出にもとづき、次のいずれかに当たる場合には禁止または制限できるとしています(厚生労働省「副業・兼業と労働条件」)。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 企業秘密が漏洩する場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により、企業の利益を害する場合

ただし、モデル就業規則は参考として示された規程の例で、実際のルールは勤務先ごとに異なります。

厚生労働省の同じページでも、副業・兼業を希望する場合は、まず勤めている会社の副業・兼業に関するルールを確認するよう案内しています。

就業規則の「副業」に作品の販売のような働き方が含まれるのか、届出が必要なのかは、人事や総務の担当部署に確かめておくと安心です。

パートやアルバイトで働いている方も、勤務先の就業規則に副業の決まりがないかを見ておきます。

公務員の方は、許可や承認が必要な場合がある

公務員の方は、法律で副業に制限が設けられています。

国家公務員法第103条では、職員は自ら営利企業を営んではならないとし、人事院の承認を得た場合にはこの規定を適用しないとしています。

同法第104条では、報酬を得て事業に従事したり事務を行ったりするには、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要とされています。

国家公務員の自営の兼業については、人事院が制度を見直し、2026年4月1日から、新たに「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」を承認できるようにしています(人事院「自営兼業制度の見直しについて」2025年12月19日公表)。

内閣人事局と人事院のQ&A集では、承認される場合がある例の一つとして、営利事業として自ら製作したハンドメイド品を販売する場合が挙げられています(内閣人事局・人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」令和8年4月・問10)。

同じQ&A集では、承認の可否は事業の内容等に照らして各府省で個別に審査されるとし、承認基準として、開業届の提出や事業計画書等の作成、職務遂行に支障がないことなどを挙げています。

地方公務員法第38条では、職員は任命権者の許可を受けなければ、自ら営利企業を営むことや、報酬を得て事業や事務に従事することはできないとされています(パートタイムの会計年度任用職員など、一部の非常勤職員は対象外)。

ハンドメイド作品の販売がこれらに当たるかどうか、どのような手続きが必要かは、所属先の人事担当にたずねます。

地方公務員の兼業については、総務省が2025年6月11日に、任命権者の許可に関する留意事項を各地方公共団体に通知しています(総務省「地方公務員の兼業に関する技術的助言の通知」)。

勤務先の種類ごとの副業のルールや、公務員の兼業の制度の動きは、看護師の方向けに整理した記事「看護師は副業禁止?勤務先の種類で違うルールと確認のしかた」でも詳しく取り上げています。

定年後に再雇用やパートで働く60代の方

定年後に同じ会社で再雇用されたり、別の勤め先でパートとして働いたりしている60代の方もいらっしゃいます。

雇用の形が変わると、結ぶ雇用契約や、適用される就業規則が定年前と変わる場合があります。

定年前に副業の届出をしていた方も、今の働き方のルールで、あらためて確認しておきます。

自治体で再任用の短時間勤務の職員として働いている方は、地方公務員法第38条の許可の規定の対象になります。

確かめたいこと②:お金と制度(確定申告・住民税・年金)

ハンドメイドの副業を考えるとき、「いくらから申告が必要になるのか」が気になる方もいらっしゃいます。

このセクションでは、収入の見通しではなく、国税庁などの公的な案内で示されている基準を紹介します。

申告の手続きの方法は扱わないため、ご自身の場合の判断は税務署や税理士にご相談ください。

「20万円」は売上ではなく所得の話

会社員やパートで給与を受けている方について、国税庁の案内では、確定申告が必要な人の一つとして次のように示されています。

給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人

(国税庁 タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」[令和8年4月1日現在法令等])

ここでいう「所得」は、売上の金額そのものではありません。

国税庁の雑所得の説明では、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係るもの」とし、総収入金額から必要経費を差し引いて計算するとしています(国税庁 タックスアンサーNo.1500「雑所得」)。

ハンドメイドの販売では、材料費や販売の場の手数料、送料などが関わってきますが、どれを必要経費にできるかは、税務署や税理士に相談します。

そのため、売上だけでなく材料費や送料、手数料を記録しておくことが、申告が必要かどうかを判断する材料になります。

なお、給与を2か所以上から受けている方などは、条件が異なります(同 No.1900)。

確定申告が要らなくても、住民税の申告が必要な場合がある

所得税の確定申告が要らない場合でも、住民税は別に考える必要があります。

例えば名古屋市の案内では、市民税・県民税には所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があるとされています(名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は?」2026年1月13日更新)。

同じ案内では、所得税の確定申告をする場合には、あらためて市民税・県民税の申告をする必要はないとされています。

住民税の申告の扱いは、お住まいの市区町村の案内で確かめます。

年金を受け取りながら始める方

年金を受け取りながら、ハンドメイドの販売を始めたいと考える60代の方もいらっしゃいます。

国税庁の案内では、次のいずれにも該当する場合には、所得税及び復興特別所得税の確定申告は必要ないとされています(国税庁「公的年金等を受給されている方へ」)。

  • 公的年金等の収入金額(2か所以上ある場合は合計額)が400万円以下
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

ただし、この扱いは、公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合に限られます(同じ案内の注記)。

同じ注記では、例えば、一定の外国年金が国外で支払われる場合には、源泉徴収の対象とならないと説明されています。

また、同じ案内では、この場合でも住民税の申告が必要な場合があるとして、住民税についてはお住まいの市区町村に尋ねるよう案内しています。

ご自身が当てはまるかどうかや、当てはまらない場合に申告が必要かどうかは、税務署や税理士に確認します。

確かめたいこと③:作品ごとの決まり(許可・表示・権利)

趣味で作ってきたものの中には、販売するときに許可や届出、表示が関わるものがあります。

例えば神奈川県の案内では、身体の清浄を目的とする石けんは化粧品にあたり、インターネットやバザーなどで販売する場合にも医薬品医療機器等法の規制を受けるとされています(神奈川県「手作り石けんの取扱いにご注意を」2025年10月2日更新)。

このセクションでは、作品の種類ごとに、関係する主な決まりと確かめる先を整理します。

作品の例関係する主な決まり確かめる先
焼き菓子・ジャムなど、食品として販売するもの食品衛生法(品目や販売の形によって、営業許可または営業の届出が必要になる場合がある)/食品表示法(容器包装された加工食品のアレルギー表示など)お住まいの地域の保健所/消費者庁の案内
身体を洗う石けんなど、肌に使うもの医薬品医療機器等法(身体の清浄を目的とする石けんは化粧品にあたり、製造・販売に許可が必要。ほかの肌に使う品も、化粧品などにあたらないかを確かめる)都道府県の薬務担当課
照明器具など、電気を使うもの電気用品安全法(施行令で定める電気用品にあたる場合、事業の届出や表示などが必要)経済産業省の案内
セーター・手袋・ハンカチ・エプロンなど、一部の繊維製品家庭用品品質表示法(対象の品目では、表示すべき事項と表示方法が決められている)消費者庁「繊維製品一覧表」など
キャラクターや他人のイラスト、ブランドのロゴ、市販の型紙を使ったもの著作権・商標権/生地や型紙の販売元が示す利用条件文化庁・特許庁の案内/販売元が示す条件

※表は主な例で、販売に関わる決まりをすべて挙げたものではありません。

許可や届出が必要になる場合がある作品

食品、身体に使うもの、電気を使うものは、作り方や販売の形によって、販売の前に許可や届出が必要になる場合があります。

焼き菓子やジャムなどを販売する場合は、食品衛生法の決まりが関わります。

厚生労働省は、営業許可が必要な業種の見直しと、営業許可業種以外の事業者を対象にした営業の届出制度の創設を行っています(厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」)。

作る品目や販売の形によって、営業許可が必要なのか、届出が必要なのか、施設にどのような基準があるのかが変わるため、販売を考え始めた段階で、お住まいの地域の保健所に相談します。

また、容器や袋に入れた加工食品については、アレルギーの原因となる特定原材料を含む旨の表示が義務付けられています(消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)。

石けんについては、神奈川県の案内で、身体を清浄にすることを目的とする石けんを製造して販売する場合には、化粧品製造業と化粧品製造販売業の許可を取得する必要があり、無許可で製造された石けんを販売することも禁止されていると説明されています(同「手作り石けんの取扱いにご注意を」)。

石けんのほかにも肌に使うものを作る場合は、化粧品などにあたらないかを、作り始める前に都道府県の薬務担当課に相談します。

照明器具など電気を使う作品は、電気用品安全法施行令で定める「電気用品」にあたる場合、電気用品安全法の対象になります。

経済産業省の案内では、電気用品の製造事業を行うには、国への事業届出、基準適合確認、自主検査を行い、販売にあたっては表示などを行わなければならないとされています(経済産業省「届出・手続の流れ」)。

作品が対象の品目にあたるかどうかは、経済産業省の案内で確かめます。

表示の決まりがある作品

衣類などを販売する場合は、品質の表示の決まりが関わる場合があります。

家庭用品品質表示法は、消費者が日常使用する家庭用品を対象に、事業者が表示すべき品質の事項や表示方法を定めた法律です(消費者庁「家庭用品品質表示法」)。

衣類など一部の繊維製品は、この法律の対象の品目です。

消費者庁の「繊維製品一覧表」には、セーターや手袋、ハンカチ、エプロンなども載っています。

作品が対象にあたるかどうか、何をどのように表示するかは、「繊維製品一覧表」や「製品別品質表示の手引き」で確かめられます。

柄・型紙・素材の利用条件と権利

キャラクターや他人のイラスト、ブランドのロゴを作品に使う場合は、著作権や商標権が関わります。

文化庁の案内では、著作物にあたらない場合や保護期間が満了している場合などを除き、著作物を利用するためには、原則として権利者の許諾を得ることが必要とされています(文化庁「他人の著作物を利用したい場合など」)。

商標についても、特許庁の案内では、商標権を侵害する者に対しては、差し止めや損害賠償などを請求できるとされています(特許庁「商標制度の概要」)。

市販の生地や型紙、パーツには、作品の販売を認めているかどうか、どの範囲で認めているかといった利用の条件が示されている場合があります。

販売する前に、生地や型紙の販売元が示している条件を確かめておきます。

作品の説明で「効果」をうたわない

石けんやアロマを使った雑貨などでは、説明に肌や体調への効果を書きたくなる場合もあるかもしれません。

医薬品医療機器等法では、化粧品などの効能や効果について、虚偽または誇大な広告をすることを「何人も」してはならないとし(第66条)、承認を受けていない医薬品などの効能や効果を広告することも禁じています(第68条)(厚生労働省「医薬品等の広告規制について」)。

効果を書いてよいかどうか迷う場合は、書く前に都道府県の薬務担当課に相談します。

作品の説明は、色や大きさ、素材、お手入れの方法など、確かめられる事実を中心に書きます。

確かめたいこと④:販売の場と、ネットで売るときの表示

作品を売る場には、インターネット上の場と、実際に手渡す場があります。

このセクションでは、販売の場の種類と確かめたいこと、ネットで売るときに関わる表示、勧誘で気をつけたいことを取り上げます。

販売の場の種類と、それぞれの利用規約

作品を売る場としては、主に次のようなものがあります。

  • 作品の販売を目的とした、ネット上の販売サイト
  • 個人どうしで品物を売り買いするフリマアプリ
  • 自分で開くネットショップ
  • 雑貨店などに作品を置いてもらう委託販売
  • 手作り市やバザー、地域のイベント

どの場を使う場合も、出品できない品目や手数料、送料の負担、売上を受け取る時期などは、その場の利用規約や出店の条件で決められています。

手数料や規約は変わることがあるため、出品する前に、その時点の規約を読んでおきます。

委託販売や手作り市では、置いてもらう条件や手数料が、お店や会場ごとに異なります。

ネットで売るときの「特定商取引法の表示」

インターネットで作品を販売する場合は、特定商取引法の「通信販売」の決まりが関わる場合があります。

消費者庁の案内では、販売を業として営むとは、営利の意思を持って反復継続して取引を行うことをいい、この要件に当てはまれば、個人でも特定商取引法上の販売業者になるとされています(消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」)。

通信販売の広告には、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示することになっています。

ただし、消費者からの請求によって、これらの事項を記載した書面(インターネット通信販売においては電子メールでもよい)を遅滞なく提供することを広告に表示し、実際に請求があった場合に遅滞なく提供できるような措置を講じている場合には、表示の一部を省略できるとされています。

自宅の住所などを表示することに不安がある方は、使う販売の場にどのような仕組みが用意されているかも含めて、消費者庁の案内と販売の場の規約を確かめておきます。

「仕事を紹介する」と材料や講座の購入を勧められたら

副業を探していると、「作品を買い取る」「仕事を紹介する」といった誘いを目にする場合もあります。

消費者庁の案内では、「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘い、仕事に必要であるとして商品などを売って金銭負担を負わせる取引を「業務提供誘引販売取引」とし、特定商取引法の規制の対象としています(消費者庁 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」)。

この取引で契約した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録で契約の解除(クーリング・オフ)ができるとされています。

材料や講座の代金を先に求められて迷ったときは、契約の前に、消費者ホットライン「188」で、身近な消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます(消費者庁「消費者ホットライン」)。

確かめたいこと⑤:暮らしとの両立と、作る楽しさ

売ることを始めると、作る時間のほかにも時間を使うようになり、作るものの選び方が変わる場合もあります。

このセクションでは、始めてから「失敗した」「思っていたのと違った」と感じないように、暮らしとの両立と作る楽しさについて、考えておきたいことを取り上げます。

制作のほかに必要になる時間

作品を売る場合は、作る時間のほかに、いくつかの作業が加わります。

写真を撮る、説明文を書く、問い合わせに返事をする、梱包して発送する、売上や経費を記録する、といった作業です。

手作り市やイベントに出る場合は、準備や移動、会場で過ごす時間も必要になります。

始める前に、1週間のうちどのくらいの時間を作品づくりと販売に使えそうかを書き出しておくと、無理のない量を決めやすくなります。

「作りたいもの」と「求められるもの」がずれるとき

売り始めると、同じ作品をくり返し作ったり、決めた日までに仕上げたりすることが求められる場合があります。

自分のペースで作っていたときの楽しさが、注文に応える負担に変わったと感じる方もいらっしゃいます。

作りたいものと、買ってくださる方が求めるものが違ったときに、どちらを優先するかを先に考えておくと、迷ったときの目安になります。

楽しみ方は人それぞれで、編み物でも、決まった形を丁寧に仕上げるのが好きな方もいれば、色や形を自由に試すのが好きな方もいらっしゃいます。

ご自身がどんな作り方を楽しいと感じるのかを知っておくと、売るときに何を大切にするかを決めやすくなります。

編み物の楽しみ方の違いについては、「編み物が好きな人の性格とは?向いている人と楽しみ方の合わせ方」でも紹介しています。

家族の予定や介護と重なるとき

家族の予定や親の介護、ご自身の体調などで、作業ができない時期が出てくる場合もあります。

注文を受けてから作る形にする場合は、一度に受ける数の上限や、受付を休む方法を、販売の場の規約の範囲で決めておきます。

作った作品の中から販売する形にすると、作る時期と売る時期を分けやすくなる場合もあります。

細かい作業を長い時間続けていると、目や肩、手首に負担を感じる場合もあるため、休憩をはさみながら進め、痛みや違和感が続くときは医療機関に相談します。

小さく試せること(始め方の順番)

5つのことを確かめたら、いきなり大きく始めずに、小さく試して振り返る方法もあります。

このセクションでは、始め方の順番の一例と、記録の残し方を紹介します。

確かめる・絞る・書き出す・振り返る

始め方の一例として、次の4つの順番があります。

  1. 確かめる:この記事の①〜⑤を確かめ、勤務先への届出や、作品ごとの許可・表示が必要かどうかを先にはっきりさせる
  2. 絞る:最初に出す作品を数点に絞る。③の決まりの確認が少なく、同じものを無理なく作れて、送りやすいものから選ぶ方法もある
  3. 書き出す:材料費、送料、販売の場の手数料、作るのにかかった時間を書き出す
  4. 振り返る:期間を区切って、続けるか、作品を変えるか、趣味に戻すかを考える

どの手芸の作品から考えるか迷っている方は、「手芸の種類一覧|50代・60代から始める12の手芸と選び方」も参考にしてください。

売上と経費の記録を残しておく

記録は、②で紹介した申告が必要かどうかを判断する材料になります。

日付、売れた作品と金額、材料費や送料、手数料などを、ノートや表計算ソフトに残しておく方法があります。

材料のレシートや、販売の場の取引の記録も、あわせて保管しておきます。

何をどのくらいの期間保存すればよいかは、税務署や税理士に確認します。

よくあるご質問

ここまでの内容に関わる疑問を、6つ取り上げます。

Q1:ハンドメイドの販売は「副業」に入りますか?

勤務先のルールの上で「副業」に当たるかどうかは、勤務先の就業規則の決め方によって変わります。

作品の販売が届出の対象になるかどうかは、人事や総務の担当部署にたずねます。

税金の面では、販売で得た所得が申告の対象になるかどうかを、②で紹介した基準で考えます。

Q2:副業を禁止している勤務先で、作品を販売してもよいですか?

勤務先のルールに従うことになります。

厚生労働省のモデル就業規則では、副業・兼業を届出にもとづいて扱い、4つの場合には禁止または制限できるとする例が示されていますが、実際のルールは勤務先ごとに異なります。

作品の販売が禁止の対象に含まれるのか、届出や相談をすれば認められるのかを、担当部署に確かめます。

Q3:勤務先に知られずに始めることはできますか?

この記事では、勤務先に知られずに始める方法は扱いません。

まず就業規則を確かめ、届出が必要であれば届け出てから始めます。

公務員の方は、①で紹介したとおり、法律で許可や承認が必要とされている場合があります。

Q4:扶養に入っていても始められますか?

扶養には、税金の扶養(配偶者控除など)と健康保険の扶養があり、確かめる先が違います。

税金の扶養は国税庁の案内や税務署で、健康保険の扶養はご自身が加入している健康保険の窓口で、それぞれの基準を確かめます。

Q5:どんな作品から始めればよいですか?

この記事では、売れやすい作品は示していません。

始めるときの考え方の一つとして、③の決まりの確認が少ないもの、同じものを無理なく作れるもの、壊れにくく送りやすいものから選ぶ方法があります。

Q6:60代からでも始められますか?

60代から作品の販売を始める方もいらっしゃいます。

この記事では、年齢ではなく、始める前に確かめられることのほうに目を向けてきました。

年金を受け取っている方は②の申告の条件を、再雇用やパートで働いている方は①の就業規則を、あらためて確かめておくと安心です。

まとめ

ハンドメイドを副業として始める前に確かめたい5つのことを紹介しました。

①勤務先のルール、②お金と制度、③作品ごとの決まり、④販売の場と表示、⑤暮らしとの両立と作る楽しさの5つです。

どれも、売り始めてから慌てないために、作品を出す前に確かめておけることです。

確かめた結果、小さく売ってみることを選んでも、売らずに趣味として作り続けることを選んでも、どちらもご自身の時間の使い方です。

手元にある作品を思い浮かべながら、①〜⑤のどれから確かめてみますか。


※本記事は2026年10月23日時点で、国税庁・厚生労働省・消費者庁・経済産業省などの公式サイトを確認して作成しています。

制度や規約は変更される可能性があるため、最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

※収益や取引量は商品・販路・継続期間等により大きく異なります。

本記事の事例はあくまで一般的な傾向であり、収益を保証するものではありません。

副業に関する税務処理は、収入額や雇用契約等の条件により異なります。

詳細は税理士または国税庁公式サイトでご確認ください。

50代からの趣味と仕事